基本文献1

 サイバーリテラシーを考えるうえで基本文献となる書物についてご紹介します。(『インターネット術語集』末尾より引用)

『ニューロマンサー(neuromancer)』
ウィリアム・ギブスン
(黒丸尚訳、ハヤカワ文庫、1986。原書は1984)
「サイバースペース」という言葉を世間に流布した記念碑的SF作品。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』
フィリップ・K・ディック
(浅倉久志訳、ハヤカワ文庫、1977、原書1968)
映画「ブレード・ランナー」の原作となったSF作品だが、ストーリーは映画とだいぶ違う。
『電脳空間右往左往』
田村秀行・若月裕子
(NTT出版、1999)
画像処理技術と人工知能の専門家が書いた恰好のサイバースぺース入門書。
『サイバースペース』
マイケル・ベネディクト編
(NTTヒューマンインターフェース研究会他訳、NTT出版、1994)
1990年に開かれた「サイバースペース大会」の議論をもとに編纂された評論集。
『人間機械論 第2版』
ノーバート・ウィーナー
(鎮目恭夫・池原止戈夫訳、みすず書房、1979、原書は1954)
「サイバネティックス」の創始者が新しい学問について一般向けに解説し、自己の世界観を語る。
『メディア論』
マーシャル・マクルーハン
(栗原裕、河本仲聖訳、みすず書房、1987、原書は1964)
『グーテンベルクの銀河系』
マーシャル・マクルーハン
(森常治訳、みすず書房、1986、原書は1962)
電子メディア時代を見通した、いまでもみずみずしいメディア論の古典。
『思考のための道具』
ハワード・ラインゴールド
(栗田昭平監訳、パーソナルメディア、1987)
おもしろく、しかも丁寧に書かれたパーソナル・コンピュータ発達史。
『コンピュータ パワー』
ジョセフ・ワイゼンバウム
(秋葉忠利訳、サイマル出版会、1979)
1976年の時点でコンピュータ(人工知能)の限界を理解するよう警告した有名な古典。
『コンピュータと教育』
佐伯胖
(岩波新書、1986)
「機械の知」がどういうふうに人間の思考とかかわりあっていくことが望ましいかを考える。
『接続された心』
シェリー・タークル
(日暮雅道訳、早川書房、1998)
MUDプレイヤーの心理を分析し、ゲームが新たなアイデンティティ構築に寄与する可能性を示唆。
『オープンソース』
クリス・ディボナ他編
(倉骨彰訳、オライリー・ジャパン、1999)
オープンソースの歴史とその考え方について、実際に推進してきた人たちが書き記した資料的価値の高い書。
『消えゆくコンピュータ』
久保田晃弘
(岩波書店、1999)
「道具を使いこなす」視点から、人とコンピュータを仲立ちするインターフェースについて論じている。
『意識通信』 
森岡正博
(筑摩書房、1993)
「情報通信」から「意識通信」へ。電話を通じてメディアや匿名コミュニケーションについて語る。
『コミュニティ・ソリューション』
金子郁容
(岩波書店、1999、新版あり)
ヒエラルキー型からコラボレーション型へ。インターネット時代の新しい意思決定のあり方を探る。
『ネットワーク社会の文化と法』
夏井高人
(日本評論社、1997)
表題のテーマに関し、大学生用の教科書、および一般社会人向けの教養書を意図して書かれた入門書だが、いまなお新しい洞察に満ちている。
『インターネット』
『インターネットII』 

村井純
(岩波新書、1995、1998)
日本のインターネットを育てた第一人者だけにエピソードが豊富な読み物になっている。
『極端に短いインターネットの歴史』 
浜野保樹
(晶文社、1997)
冷戦、ベトナム戦争、カウンター・カルチャー……。インターネットを生み出した背景を探る。
『インターネットの理解』 
『DOORS』特別編集
(朝日新聞社、1995)
インターネット爆発と言われた1995年時点のインターネットの様子がよく分かる。
『市民力としてのインターネット』 
牧野二郎
(岩波書店、1998)
1996年秋に発足したインターネット弁護士協議会代表をつとめる著者によるインターネット論。
『電子マネー入門』 
岩村充
(日経文庫、1996)
電子マネーという技術は金融のあり方、国際社会のありかたをどのように変えるかを概観。
『ディジタル・エコノミー』
『ディジタル・エコノミーII』 

米国商務省
(室田泰弘訳、東洋経済新報社、1999)
デジタル・エコノミーの影響を詳細に分析した’The Emerging DigitalEconomy’の翻訳。
『いま日本語が危ない』 
太田昌孝
(丸山学芸図書→光芒社、1997)
文字コードの基本的考えを丁寧に説明、欧米文化圏主導で決められたユニコードのISO化に反対している。
『電脳文化と漢字のゆくえ』 
平凡社編
(平凡社、1998)
小説家、文芸評論家、人文科学研究家たちが文字コード問題と日本語の将来に警鐘を発した書。
『漢字問題と文字コード』 
小池和夫・府川充男・直井靖・永瀬唯
(大田出版、1999)
文字コードの歴史を振り返りながら、反JIS、反ユニコード派に対する反批判を展開。
『一九八四年』 
ジョージ・オーウェル
(新庄哲夫訳、早川書房、1968、原書は1949)
独裁政治の恐怖を描いたSFが電子監視社会の不気味さを暗示することになった。
『憲法III』 
奥平康弘
(有斐閣、1993)
憲法が私たちに保障している権利とは何か。個性豊かな憲法論。
『インターネット法学案内』 
インターネット弁護士協議会編著+村井純
(日本評論社、1998)
インターネット弁護士協議会に結集する弁護士、法学者らによる「電脳フロンティアの道しるべ」。
『サイバースペースと法規制』 
藤原宏高編
(日本経済新聞社、1997)
罪刑法定主義の原則を貫くために、ネットワークのあるべき法的環境整備を提案している。
『警察がインターネットを制圧する日』 
寺澤有編
(メディアワークス、1998)
インターネット規制が「わいせつ取り締まり」からはじまったとき、いち早く応戦した書。
『暗号』 
辻井重男
(講談社選書メチエ、1996)
軍事・外交上の武器からネットワーク社会のセキュリティ・ツールに変身した暗号の興味深い解説書。
『PGP 暗号メールと電子署名』 
シムソン・ガーフィンケル
(山本和彦監訳、オライリー・ジャパン、1996)
解説されているPGPは旧バージョンだが、暗号に対する基本的理解を得ることができる。
『暗号・日米ビジネス戦略』 
NHK出版編
(日本放送協会、1997)
NHKの特別番組をもとにしたムックだが、中身は詳細、かつ行き届いている。
『Cookies入門』 
シモン・ローレンツ
(株式会社クイック訳、アスキー出版局、1998)
技術者が書いたクッキーのガイドだが、社会的な目配りもきいている。
『プライバシー・クライシス』 
斎藤貴男
(文春新書、1999)
具体的事例と明快な叙述。この種のジャンルでジャーナリストが書いたものとして出色。
『プライバシーと高度情報化社会』 
堀部政男
(岩波新書、1988)
1980年にOECDが出したプライバシー保護に関する勧告とガイドラインなどを紹介。
『マルチメディアと著作権』 
中山信弘
(岩波新書、1996)
著作権法もマルチメディア時代におけるパラダイムシフトが必要と説く。
『サイバースペースの著作権』 
名和小太郎
(中公新書、1996)
サイバースペースにおけるマルチメディア著作物がかかえる問題を分析。
『インターネットヒストリー』 
ニール・ランダール
(村井純監訳、オライリー・ジャパン、発売オーム社、1999、原書は1997)
インターネット開発に携わった多くの人々のインタビューを収録した貴重な資料でもある。
『インターネットが変える世界』 
古瀬幸広・廣瀬克哉
(岩波新書、1996)
インターネット発達史におけるハッカーの役割を指摘しつつ、日本の事情にも具体的に触れている。
『ハッカーズ』 
スティーブン・レビー
(古橋芳恵・松田信子訳、工学社、1987、原著は1984)
多くのハッカーにインタビューし、ハッカー倫理をまとめあげた、いまや歴史的古典。
『ハッカーを追え!』 
ブルース・スターリング
(今岡清訳、アスキー出版局、1993)
1990年の「ハッカー取り締まり」を題材にサイバースペース開拓史を概観した好読み物。
『インターネット激動の1000日』 
ロバート・リード
(山岡洋一訳、日経BP社、1997)
ブラウザーのアンドリーセン、ジャバのボレーゼー、ヤフーのヤンなどのインターネット成功物語。
『ユニバーサル・サービス』 
林紘一郎・田川義博
(中公新書、1994)
「誰でも、どこに住んでいても、経済的にサービスが受けられる」コモンキャリアのサービス理念。
『自由のためのテクノロジー―ニューメディアと表現の自由』 
イシエル・デ・ソラ・プール
(堀部政男監訳、東京大学出版会、1988)
印刷メディアが勝ち取ってきた言論の自由が電子メディアによって狭められる危機感がすでに表明されている。
『なぜ「表現の自由」か』 
奥平康弘
(東大出版会、1988)
10年後の今日なお新しい、「表現の自由の原理論」がなぜ日本では「不毛または不活発」なのかという問いかけ。
『マス・メディア法入門 [第2版]』 
松井茂記
(日本評論社、1998)
現代マス・メディアに関連するさまざまな法律問題を概観しながら、問題点を的確に指摘している。
『現代メディア法研究』 
立山紘毅
(日本評論社、1996)
インターネット時代のマスメディアで働く人間に「憲法学が寄与しうる最前線」を示そうとする意欲的評論集。
『デジタル・メディア社会』 
水越伸
(岩波書店、1999、新版あり)
人間と社会の側から情報技術にアプローチし、デジタル・メディア社会の今後の在り方を探る。
『公共圏という名の社会空間』 
花田達朗
(木鐸社、1996)
多元的な言説空間としての公共圏を通じて、現代のメディア状況やジャーナリズムのあり方を考察。
『情報の空間学』 
黒崎政男監修
(NTT出版、1999)
メディアとしてのサイバースペースの「受容と変容」について哲学者、社会学者、科学史家、技術者、精神科医などが共同討議した成果。
『マス・メディアの時代はどのように終わるか』 
矢野直明
(洋泉社、1998)
メディアとしてのホームページのあり様を分析しながら、マスメディア再生のビジョンに言及。