北沢栄『静かな暴走 独立行政法人』(日本評論社)
今回の総選挙で小泉自民党が地すべり的圧勝を果たし、いよいよ「郵政民営化」に向かって動き出す。首相は「構造改革の第一歩」だと言っているが、果たしてそうか。小泉自民党に一票を投じた人にとっても、今後の具体的施策は気になるだろうが、そういう人にこそ、この書を薦めたい。
結論的に言えば、著書は「『小泉改革』は道路公団民営化もそうだが、総論段階ではまともに見える方向性を示すのに、いざ具体化されるとイカサマに変わる」と書いている。それは「改革方針は提示したが、自らはフォローせずに成案作りを官僚に丸投げして、審議が山場を迎えても傍観している」小泉流手法のためで、だから「実際に行った『改革』は、優先順位と手法を誤り、ことごとく実質のない、形だけ改革ふうに整えたエセ改革に終わった。それは国民に『改革の幻想』を振りまいて、来るべき真の改革を将来に大きく先送りした点で、罪深いものであった」。
特殊法人改革の一環だった独立行政法人化もまた同じで、中途半端な(見せかけの)「自律性」を持たせたことが、結果的に「役員の9割超が天下り」、「特殊法人より高額の役員報酬」という官僚の「焼け太り」を招いていると、著者は論難している。
著者はすでに『公益法人』(岩波新書)、『官僚社会主義 日本を食い物にする自己増殖システム』(朝日選書)という意欲作を世に問うており、本書は「行革3部作」の最終編との位置づけだ。公益法人にしろ、独立行政法人にしろ、複雑な縦割り行政のもとに公開される、限られた、しかもそれぞれは膨大な資料を読み解く作業を通じて書き上げられた本書は、日本官僚社会の「隠された意図」を鮮やかに摘出している。
もっとも、このような事態(政治)を生み出したのは私たち一人ひとりであり、だからそれを変えることもまた可能なのだと著者は述べ、そのための方策も提示している。小泉流「郵政改革」を見守り、自分たちの求める改革を実現させるための国民の責任もまた大きいと言えるだろう。
投稿者: Naoaki Yano | 2005年09月23日 11:57