尾花紀子・高橋慈子他『子どもといっしょに安心インターネット』(岩波書店)
パソコンとケータイの普及にともない、インターネットはすでに老若男女、国民すべてにとって欠かせない道具になったが、インターネットという新しいツールならではの事件事故もまた増えている。とくに家族や地域といった現実世界の生活を通して、ひととおりの知識を得る前に、サイバー空間という新しい情報環境に接する子どもたちが直面する危険は親の想像をはるかに超えている。
そして問題は、親たちがそのことにほとんど気づいていないことである。この本はそういう現状に警告を発しつつ、インターネットを安全に使うためのノウハウを子どもと親の双方に伝えることをめざしている。
三部作で、『なにができるの?』(青本)では、子どもの学習にも役立つホームページの見方やつくり方、電子メールの便利な利用法などインターネットの楽しみ方が、『なにが危険なの?』(赤本)では、パスワードの重要性、ウイルス対策を怠ると友人や知人にどんな迷惑をかけるか、個人情報を漏らすと何が起こるか、といった危険が、言ってみれば、インターネットの光と影が書かれている。
インターネットはすでに車並みに普及したが、車の運転に必要な免許は不要で、まさに、だれもが自由に使えるところにこそインターネットの良さがあるが、これだけ普及すると、一定のリテラシー(基本素養)が必要にもなる。
インターネット黎明期なら、それを使いこなすのにそれなりの技術が必要だったが、いまはほとんど何の知識がなくても、ホームページにアクセスしたり、電子メールで情報を交わしたりできる。このデジタル技術の長所が、一方で災いともなるのである。
インターネットがらみの事件事故は直接生命につながることが少ないこともあり(間接的、長期的には、より危険でもあるが)、ブレーキとアクセルを踏み誤るとか、前進とバックを間違えるとか、高速道路の反対車線を突進するとか、常識では考えられないような「無謀運転」が多い。『どうトラブルを避けるの?』(黄本)は、そういうドライバーに対する無謀運転防止策でもある。
自分が無謀運転をしていることに気づいていないドライバーが多いだけに、子どもも大人も含めて、学校現場でも、家庭でも、職場でも、いま一度インターネットについて考えるためのかっこうの教科書だと言えよう。
主要著者の尾花、高橋両氏とも早くからコンピュータの世界で活躍してきたネットワークの専門家であり、同時に中学生以下の子どもを持つ母親でもある。親が知らないうちに子どもが経験しているトラブルなど、学校や地域のつきあいを通じて体験した生のエピソードや、他人に知られない電子メールのつくりかた、迷惑メールの見分け方などの具体的ノウハウが随所にあふれている。
投稿者: Naoaki Yano | 2005年11月03日 12:19