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2014年06月29日

女子高生とスマートフォン(2014/6)

 3月に公表されたある調査によると、女子高生は1日平均6時間以上、スマートフォン(従来型のケータイを含む、以下同じ)を使っているという。1日は24時間、睡眠平均8時間として、起きている16時間のうち3分の1以上で、スマートフォンをいじっている計算になる。彼女たちのサイバー空間滞在時間はきわめて長い。

起きている時間の3分の1以上で使う

 調査は情報セキュリティ会社、デジタルアーツが今年2月、全国の10~18歳の男女と18歳以下の子どもを持つ保護者各600人余、合計12000人以上を対象に行ったもので(1)、それによると、未成年者の1日平均のスマートフォン使用時間は小学生男子1.6時間、同女子1.4時間、中学生は男女とも1.8時間、高校生男子4.3時間、高校生女子6.4時間となっている。女子高生の4割以上が6時間以上使っていた。どのようにサンプルをとったのか不明だし、女子高生のサンプル数が100名程度と少ないけれど、それにしても6時間以上もスマートフォンに接しているという結果は驚きである。

 同調査は継続して行われ、未成年者のスマートフォン所有は、11年11月 14%、12年11月 37%、13年8月 50%、14年2月60%と、ここ数年で急速に増えている。女子高生についてみると、11年11月 21%、12年11月 65%、13年8月 75%、14年2月 95%である(14年2月の男子高校生は81%)。調査対象者の54%が「スマートフォンのない生活は考えられない」と答えており、ここでも女子高生の割合は71%と高い。

 もともとコンピュータはメカ好きの男子向きツールだったが、ケータイ、スマートフォンへと進化するにつれて、若い女性の好むアクセサリー、あるいは生活必需品に変わってきた。インターネットが操作する「技術」より所与の「環境」になった時代の特徴が女子高生に典型的に表れているとも言えよう。

メディア接触時間調査

 私たちはふだんメディアにどのように接触しているかを示す「メディア接触時間調査」は、マスメディアや広告会社が従来、言わば定番として行ってきたものである。たいていテレビがダントツで、そのあとに新聞、雑誌、ラジオなどが続く。95年ごろからここにインターネットが登場し、それと並行して若者を中心とする活字離れ、新聞・書籍離れが進んできた。その従来の枠組みを今も踏襲しているNHKの「国民生活時間調査」による2010年の数値は次のようになっている。

<2010年の平均視聴時間(平日)>

テレビ         3:28
新聞         0:19
インターネット      0.23
雑誌・マンガ・本   0.13
ラジオ         0:20
ビデオ・HDD、DVD  0:13
CD・テープ      0:07
 

 テレビの3時間28分というのは、日本でテレビ平均視聴時間が1日3時間を超えた1965年以来ほとんど変わらないが、それでも10年のデータでは、10代~20代の男性が2時間を切り、女性でも2時間台前半と、若年層でのテレビ視聴時間は減少傾向にある。

 もっともここで注目したいのは、インターネットの23分という数字である。2010年と言えばすでに4年前であり、その間に、先の調査で明らかなように、スマートフォンが急速に浸透してきている。同時に、そのスマートフォンの高機能化が使用時間を長引かせてもいる。

 しかし、こういうメディア接触時間調査では現在のメディア状況を把握できなくなっていることを考慮すべきである。

 国民生活時間調査で「インターネット」にカウントされているのは「自由時間内の趣味や娯楽としてのインターネット利用行動」だけであり、「仕事や学業、家事でのインターネット利用は含まない。また電子メールの読み書きは『会話・交際』に含めており、インターネットには含まない」からである(2)。
 
 これでは現代におけるインターネットというメディアの利用時間を正確に測定することはできない。いまや私たちはスマートフォンで仕事をし、ニュースを見、さまざまな催し物ガイドを検索し、そして友だちとチャットをしている。そのスマートフォンの利用時間が女子高生の場合、1日6時間以上に及ぶということである。

重みを増すサイバー空間

 先の調査に戻ろう。スマートフォンの普及は、利用時間の長期化と同時に、使いすぎへの心配、それに拘束される息苦しさといったジレンマをも生じさせている。スマートフォンの使用で身近な人から「注意を受けた」経験がある未成年者の割合は21%(さすがにこの数字は中学生の方が高校生より多い。男子42%、女子44%。これに対して女子高生は37%)。また、女子高校生の58%が「インターネットを始めてから気分が落ち込んだり、自分が嫌になることがある」と答えている(男子高生は43%)。

 よく言われることだが、スマートフォンのアプリ「ライン(LINE)」の「既読」機能のために、返事をすぐ書かないと相手に妙に思われるかもしれないという脅迫観念にとらわれたり、深夜まで続くチャットの切り上げ時に悩んだりする姿がここに反映されている。ラインに加わっていないと、翌朝の学校での話題についていけないとか、ラインがいじめの温床になっているといった問題も指摘されている(昨年7月には広島県で16歳の少女らが仲間の少女を殺して山に放置する事件が起こったが、彼女らを結びつけていたのがラインだった)。

 スマートフォンは便利でもあり、悩ましくもある道具である。私はこのようなデジタル機器を使っている人びとの心の内に生じるドロドロとした情念を「デジタルのマグマ」と呼んでいる。99回ではベビーシッター事件に関連して、サイバー空間に振り回されるのではなく、現実世界にしっかりと軸足を置くことの必要性も強調した。

 女子高生をいわば先兵として、若者たちがスマートフォンに複雑に取り込まれている現状について、もう少し体系的な分析が必要だと思われる。これは大人である私たち自身の問題でもある。さらに、前回紹介したように、いまの子どもたちは幼児の段階ですでにスマートフォンやアイパッドなどのタブロイド端末に接するようになっているのである。

(1)http://www.daj.jp/company/release/data/2014/031002_reference.pdf
(2)「生活利用調査からみたメディア利用の現状と変化~2010年国民生活時間調査より~」
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2011_06/20110605.pdf

投稿者: Naoaki Yano | 2014年06月29日 12:06

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