『時計じかけのオレンジ』(1972年 米)

時計じかけのオレンジ [Blu-ray]

 ども。最近、腰が痛いkikです。歳のせいでしょうか。足底筋膜炎は三十年来の持病だし、肩こりは年々ひどくなるし、たまに膝も痛いし。うーむ。加齢とは、痛みが増えることと見つけたり。

 さて。痛いといえば、本作の主人公、15歳の不良少年アレックスも、相当「イタい奴」です。違う意味で。その純粋なまでの暴力衝動と酷薄さは、マジでヤバいです。正直、僕にとってはトラウマ映画です(少年時代に観てしまったので)。

 もちろん、ニューヨーク映画批評家協会の最優秀作品賞と監督賞を受賞しているくらいですから、映画としての完成度は高いですよ。未見の方には是非お薦めしたい傑作。いま見れば、その暴力描写も当時ほどのインパクトはありません。

 とはいえ、公開当時はその暴力描写に賛否が分かれ、いくつかの国では公開禁止になったほど。実際、イギリスやアメリカでは 本作に影響を受けた暴力事件 も発生し、キューブリック自身がイギリスでの公開を中止しました。アメリカでも一部のシーンを差し替えています。まあ、当時としては、それだけ衝撃作だったってことですね。

 本作に限らず、60年代後半から、ヘイズ・コードの呪縛から逃れたアメリカ映画界は、過激な暴力や性描写を許すようになってきました。こうした傾向は年々強まり、現代では、映画やゲーム、アニメ、コミック等、ありとあらゆるメディアで、過剰なまでの暴力やセックスが描かれています。未成年者への影響を危惧する声はどの時代にもありましたが、表現の自由との関係で、対応はそれほど進んでいません。

 このように、表現の自由と、「メディアが子どもたちに与える影響」は密接な関係にありますが(あるいは、密接な関係があると考える人が多いですが)、同時に極めてデリケートな問題でもあります。現代では「サイバー空間には制約がない」(サイバーリテラシー三原則)という事情が、問題を更にややこしくしていることも否めません。

 ちなみに僕は、「表現の自由」への規制には反対の立場です。暴力描写だろうが性描写だろうが、表現者の自由が縛られるべきじゃありません。そもそも、「描写」そのものは、問題の本質じゃないと思いますし。

 ただ、子供相手に、その手のコンテンツで商売をする「自由」 となると許容しがたい。この線引きは難しいですけどね。それに、なんというか、 自由vs規制 という対立軸に、安易に回収すべきじゃない問題もあような気もするんです。ここで語るつもりはありませんが。 とりあえず、エルサゲートとか作ってる連中は○ねばいいのに、とは思いますが。

 ちなみついでに。本作は、少年時代の僕にトラウマを残すくらいの衝撃作でしたが、怖かったのはアレックスの暴力だけではありません。劇中、逮捕されたアレックスは、政府機関の拷問(洗脳)によって、無抵抗で無気力な人間に変えられてしまいます。この「未来社会」に、僕は怯えました。

製作・監督・脚本:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
出演:マルコム・マクダウェル 他

メディアと暴力
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