『カプリコン・1』(1977年 米)

カプリコン・1 [Blu-ray]

 ども。これまでの人生で、一度も嘘をついたことがない kik です。

 まず、右の写真を見て下さい。有名なアポロ計画による月面着陸の写真ですね。人類初の快挙を撮影した、歴史に残る一枚です。

 しかし、この写真、よく見ると背景が真っ黒です。宇宙空間なのに、星一つ見えません。おかしいですね。それに、なんとなく星条旗がはためいているように見えます。空気がない月面で、なんで旗が揺れるのでしょう。

 その答えは、これが実は月面で撮影された写真ではないからです。
 アポロ計画なんて嘘っぱち。人類は月になんて行ってません。『2001年宇宙の旅』の原作者、アーサー・C・クラークが脚本を書き、キューブリックが監督して、アリゾナで撮影したのです。この写真が何よりの証拠です。

 … という 「陰謀論」 があります。1969年の月面着陸は捏造だっただとする、この「アポロ計画陰謀論」を始め、NASAが絡む陰謀論は、70年代半ばから世界中で噂されていました。(上記の疑問に対する回答はこちら

 てなわけで、こうした陰謀論をヒントに作られたのが本作です。有人火星探査船の打ち上げに失敗したNASAが、火星に無人の宇宙船を送る一方、砂漠のセットで宇宙飛行士たちに火星着陸の演技をさせる、というお話です。

 その映像によって、計画は成功したかのように報道されますが、地球に帰還する宇宙船が爆発したことで事態が一変。公には死んだことになった宇宙飛行士たちは、身の危険を感じて…と、ここから先は観てのお楽しみですが、非常に良く出来た脚本です。

 映画はもちろんフィクションですが、こうした陰謀論は、現在でも(NASA絡み以外も)ネット上に溢れています。有名なところでは、「ケネディ暗殺陰謀論」(これはオリバー・ストーン監督の『JFK』で、日本でも有名になりました)や、2001年の「アメリカ同時多発テロ事件陰謀説」、「ユダヤ陰謀論」等々、びっくりするくらい沢山あります。どれも、「お話」としては大変面白いのですが、真偽のほどは、もちろん不明です。

 ただ、真偽はともかく、なぜこれほどまで多くの陰謀論が囁かれ、ネットで拡散されているのか…といった部分は、非常に重要な点かもしれません。それら陰謀論に共通するのは、権力とメディアへの不信だからです。確かに、権力がハリウッド(=メディア)と手を組めば、どんな「嘘の報道(フェイクニュース)」も簡単ですからね。

 いまや、メディア不信は世界中に拡がっています。メディア自身に責任があるのは言うまでもないことですが、ここ最近で影響が大きかったのは、やはり2016年の米大統領選挙でしょう。トランプ候補が、メディアへの不信を隠そうとしなかったのは、非常に印象的でした。

 ところが、権力の座に就いたトランプ氏は、大統領就任2日目に(就任式に過去最高の参加者がいたという)「嘘」の情報を発表します。この「嘘」は(ロイター通信の写真によって)即座に見破られたものの、トランプ支持者は「写真はメディアが加工したものだ」という陰謀論を展開し、今でもその情報を信じる人々が存在するそうです。

 まあ、「人間は自分が信じたいことを喜んで信じる」(シーザー)ので、特定の人々にとって、フェイクニュースとは、あくまでオルタナティブファクトであって、「嘘とは違う」のかもしれません。

 とはいえ、メディア不信によって権力側の嘘も暴けなくなる(信じられなくなる)としたら、僕らはいったい何を信じれば良いんでしょう。何も信じられない時代になるのでしょうか。最近思うのですが、この状況自体、メディア不信を広げることによって利益を得る誰かによって、こっそり仕組まれた陰謀なんじゃないでしょうか(笑)。

監督・脚本: ピーター・ハイアムズ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演: エリオット・グールド/ジェームズ・ブローリン/テリー・サバラス 他

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