名和「後期高齢者」(1)

自転車が怖い

 「コウキコウレイシャ」(以下、KK)の一員になって久しい。ただし私はこの言葉を「拘忌コウレイシャ」と聞いてしまうことが多い。まれには「好奇コウレイシャ」か。まちがっても「好機コウレイシャ」とは聞こえない。そんな年寄りの世迷言を、以下、呟いてみたい。

 ㏍にとっての脅威、それは自転車である。音もなく、突如として出現し、高速度で自分の脇を通り抜けていく。反射機能が鈍く、姿勢制御が衰えた㏍にとっては、これが怖い。私は腹筋と背筋とが弱いので杖を使っているのだが、その杖が自転車をこぐ人へ注意を送るシグナルになることは、まず、ないようだ。

 念のために、いま、ウェブで確かめたら、自転車は車道を通行すべしというルールがあるようだ。だが、その実態は上記の通り。自転車はトレーラーなどが往来する車道上では弱者になる。たぶん、それを避けるために歩道に侵入するのだろう。これがデファクト標準になってしまった、ということかな。

 自動車には「左前方ニ注意」などと音声メッセージを呟いてくれる車載警報器がある。同種のものを自転車や杖につけるという手もあろうが、これは「ながらスマホ」と同じく、ユーザーの注意を分散させることになるかもしれない。

 老残の身にはこれ以上のことには考えが及ばないが、ここで「アフォーダンス」(affordance)という言葉があることを思い出した。ということで、まずは、KKのアフォーダンスについて考えてみたい。

 ここで編集者の矢野さんから助言をいただいた。歩道の自転車通行については、道路交通法でいくつかの場合には歩道通行がよしとされており、その一つに「運転者が13歳未満又は70歳以上、または身体の障害を有する者である場合」があるという。それで思い出したが、私は歩行に不自由な人(たぶんKK)が、何回か失敗したあとに、やっと自転車にまたがることに成功し、あとは、スイスイとその自転車をこいでいく姿をみたことがある。これ、ご当人にとっても周りの人にとっても、危ない。だが、ご当人にとっては欠かせない生活の一部であるはず。さて、いかがすべきか。