ホモ・デウスはサピエンスを動物のように扱う
ハラリは『サピエンス全史』および『ホモ・デウス』で人類(サピエンス)がもともとは仲間とも言える動物をいかに残酷に扱ってきたかを縷々述べているが、その実態をつぶさに観察すれば、来るべき時代でホモ・デウスがサピエンスをどう扱うかがはっきりするというのが著者の考えらしい。
「私たちも動物であることは動かしがたい事実だ。そして自らを神に変えようとしている今、自分の由来を思い出すことはなおさら重要になる。私たちが神になる未来を研究しようというのなら、動物としての自らの過去や、他の動物たちとの関係は無視しようがない。なぜなら、人間と動物の関係は、超人と人間の未来の関係にとって、私たちの手元にある最良のモデルだからだ。超人的な知能を持つサイボーグが普通の生身の人間をどう扱うか、みなさんは知りたいだろうか?それなら、人間が自分より知能の低い仲間の動物たちをどう扱うかを詳しく調べるところから始めるといい」。
サピエンスが動物にしてきたことを、ホモ・デウスはサピエンスにするだろう、ということである。
動物の虐待については立ち入らないが、麻酔なしに実験動物を切り刻んだり、豚や牛、ニワトリなどの家畜を狭いスペースに閉じ込め、自然環境から完全に隔離して、食肉や牛乳や卵の生産機械に落としめたりしている実態は、だれもが知って(黙認して)いることである。
参考までに、両書に掲載されている豚と牛の写真に添付されている説明のみ紹介しておこう。少しは暗澹たる気分になるかもしれない。
「妊娠ブタ用クレートに閉じ込められたメスブタたち。この非常に社会的で知能の高い動物は、まるですでにソーセージででもあるかのように、このような境遇で一生のほとんどを過ごす」、「工場式食肉農場の現代の子牛。子牛は誕生直後に母親から引き離され、自分の身体とさほど変わらない小さな檻に閉じ込められる。そこで一生(平均でおよそ4カ月)を送る。檻を出ることも、他の子牛と遊ぶことも、歩くことさえ許されない。筋肉が強くならないようにするためだ。……。子牛が初めて歩き、筋肉を伸ばし、他の子牛たちに触れる機会を与えられるのは、食肉処理場へ向かうときだ。進化の視点に立つと、牛はこれまで登場した動植物のうちでも、屈指の成功を収めた。だが同時に、牛は地球上でも最も惨めな動物に入る」。