東山明「禅密気功な日々」(6)

気を動かす=細胞を共鳴させる

 先に築基功のやり方に関して、「円緩軽柔=ゆっくり、柔らかく、なめらかに、そして速度は一定」が大事だと書いたけれど、それは体をなぞるようにして気を動かすということである。朱剛先生流に言えば、「白くて粘っこい」気を動かす。私流に言えば、体中の細胞を蠕動の動きに共鳴させる、ということになるだろうか。

 坐禅で呼吸を数える、いわゆる数息観でも、呼吸の速さはゆったりしたものでなくてはならない。「どのくらいの速さがいいのか」と問えば、「いろいろ試しているうちに、自分にぴったりの呼吸に落ち着く」というふうに教えられる。自分固有の速さというのが大事である。築基功で言えば、個々の細胞が共鳴するような動かし方がある、ということだと思われる。

 この点で興味深いのがバイオレゾナンスの考え方である。

 バイオレゾナンスはドイツ発祥の振動医学による治療法である。振動医学では、一般の西洋医学とは違って、人間の体を生命エネルギー(すなわち気)の場ととらえ、気が体の隅々にまでスムーズに流れることが健康な状態であるとする。逆に滞った状態は不調である。

 この気の捉え方は、私の気功の考え方と共通しているが、興味深いのは、バイオレゾナンスでは「『気の滞り』にも原因などによって固有の周波数の波動があり、その同じ周波数の波動による共鳴現象(ハーモナイズ)によって滞りを解消できる」としていることである。「生命エネルギー(=気)の振動(=波動)には、それぞれの器官、組織、働きなどにより固有の周波数があること。そして、その気が滞りスムーズに流れなくなることが、健康が損なわれるということであり、そのときには滞りと同じ周波数の波動による共鳴現象によって滞りが消えて再び気が活発に流れるようになる、これが健康を取り戻すということだ」(ヴィンフリート・ジモン『「気と波動」健康法』イースト・プレス、2019)。

 バイオレゾナンス理論は、プランクの量子論、前科学的な地中探査法であるダウジング(北米大陸やアンデスなどの先住民が地下水脈や鉱脈を見つけるために使ってきた)、そして東洋医学・チベット医学の「気」の三要素をもとに組み立てられたという。実際、診断治療においても、丸い球がついた揺れる竿のようなものを使う。

 私が注目するのはレゾナンス(共鳴) という言葉である。バイオレゾナンスについては門外漢なので、正面から論ずることはできないが、蠕動しながら体を動かしていると、体内の滓がほぐれ、気がゆるやかに流れるためには、やはり細胞を共鳴させてやる必要があるように思われる。その共鳴のしかたは、部署(筋肉や内臓)によっても違うし、日によっても違うようである。