衆院選で自公過半数割れ、れいわは9議席獲得
B 10月27日開票の衆院選で自民党は裏金問題のあおりで旧安倍派を中心に大幅に議席を減らし、公明党とあわせても過半数に届かない惨敗となりました。第一野党の立憲民主党が大躍進、国民民主党は4倍増、れいわ新選組も3倍増の9議席を獲得しました。日本維新の会と共産党は議席を減らしました。
れいわの9人は、大石あき子、くしぶち万里、たがや亮の現役3人のほかに、幹事長の高井たかしを始め、上村英明、佐原若子、さかぐち直人、やはた愛、山川ひとしが新議席を得ました。いずれもそれぞれ個性的な経歴の持主で、政治改革への意欲も旺盛だと見受けられます。れいわのウエブには9人勢揃いの写真が載っていますが、親の家業を漫然と引き継いでいるような世襲議員がいないのがさわやかです。
A 他党には見られない質の高さを感じますね。残念だったのは福岡の奥田ふみよ、北関東比例の長谷川うい子、東京比例の伊勢崎賢治などの落選ですが、勝手なことを言わせてもらえば、これらの人びとは来年の参院選の立派な候補ではないでしょうか。
B 神奈川2区の三好りょうも残念だったですね。彼は南関東比例でもあったので、地元候補を十分応援出来なかったのには力不足を感じました。
A 自公与党で過半数割れというのは15年ぶりとか。安倍政権以来続いていた自民一強体制が終焉を迎えたのは大きな変化ですね。もっとも与野党逆転と言っても、野党はバラバラ、大躍進した立憲民主党中心に政権交代が実現するような空気はまるでないですね。
B 最終的な党派別獲得議席数は表の通りです。左が新しい議席数、次が増減数、右が選挙前議席です。自民党が65議席も減らしたのはやはり「政治とカネ」、裏金問題に対する批判が強かったせいだと思います。裏金議員46人中当選したのが18人ですが、その中には萩生田、西村、世耕(離党して無所属で立候補)など旧安倍派の重鎮も含まれています。萩生田氏は統一教会疑惑の中心人物でもありますね。そういう点では世論の裏金批判も中途半端な印象です。
今回の選挙の意味に関しては、さまざまに論評されていますが、ユーチュブ・デモクラシータイムスの「週ナカ生ニュース」で山田厚史氏が「安倍政治の終焉」だと言っていたのが正鵠を得ていると思います。彼は安倍政治を以下のように明快に総括していました。
われわれは安倍的なるものを「アベノウイルス」と呼び、それが社会全体に蔓延していることを慨嘆してきたわけだけれど(「日本を蝕んでいた『アベノウイルス』」、『山本太郎が日本を救う』所収)、とくに「国会を無視して仲間内の解釈=閣議など=で法をまげる」、「人事で官僚を支配する」、「権力の私物化」などがいかに日本社会を腐敗させたかを考えると、今回の自民一強体制の崩壊は「アベノウイルス」の毒一掃に結びつけるチャンスだと思います。と言うより、ぜひそのようになってほしいものです。
A しかし立憲、国民、維新などが、そういう大局的な動きをするとは思えず、これからの自公に国民や維新がからむ合従連衡にはあまり興味がないですね。ただ自公がこれまでのように強引にことを運べなくなったのは大いにプラスだと思います。
今回の選挙結果への感想を述べると、国民の7議席から24議席への4倍増にはちょっと驚きました。公明と維新は議席を減らしましたが、公明は石井啓一代表が落選したように、裏金議員を推薦するなど、自民べったり路線の代償だと思います。議員の高齢化も言われていますね。維新は議席数を落としているものの、大阪選挙区では19議席を独占しました。大阪万博や兵庫県知事をめぐる批判も不十分に終わった感じです。
ところで、自民の裏金問題や石破政権の裏金議員への2000万円支給をスクープして自民退潮に少なからぬ〝貢献〟をした共産党が議席をむしろ減らしたのは、気の毒な気がします。こちらも高齢化や党名変更問題、体制改革などに問題があるんだと思います。
それはそうと、開票日の山本代表は今まで見たことのないほどつらそうな表情でした。本人もはっきり「この選挙は辛かった」と言ってました。初めてですね、代表がこんなことを言うのは。一時は入院もしました。5年間走り続け、酒も止めていた訳ですから無理もないと思います。頬がげっそりこけ顔色も悪く、大いに心配しました。早い回復を祈っています。
B 投票率は53.85%と前回も下回り、戦後3番目の低さでした。つい3カ月前の東京都知事選では新人の石丸伸二候補に無党派層の支持が流れたことが大きな話題になりました。既存選挙制度の枠外に置かれた無所属若者層の票が戻ってきたようにも思えたのだが、衆院選では元の無関心に戻ってしまったのか。あるいは知事選特有の現象だったのか。
あのときはこの無関心層の票がれいわ支持に向かってほしいと思ったのだけれど、どうでしょうね。テレビがやっていたある出口調査結果では、国民の支持者に若者が多かったらしい。古い政治地図の中で、あまりにひどい自民党政治への批判が高まり、自民敗北、野党躍進になったけれど、政治構造そのものはあまり変わっていないのかもしれません。
A 自民党はさっそく、萩生田、西村、世耕各氏など当選した6人を自民会派に取り組みました。石破自民党も裏金問題を真剣に考えていないということでしょうが、これで議席は197となります。まあ、大勢には影響ないですね。
11日には国会で首班指名が行われます。自公による石破内閣が継続し、ケースにより維新、国民などと連携しつつ、参院選までだらだらとした政局が続くのではないでしょうか。国民はいずれ自民に近づいていく気がします。
マイナカードのごり押し、インボイス制度、原発再稼働など、自公が過半数議席の上で推進してきたこの種の政策に変更が起こり得るのかどうか。立憲の野田体制を考えると、安全保障体制、消費増税といった基本政策に変化が起こるとも思えないですね。
B そこにれいわがどうか関わっていけるか。山本太郎代表は28日、国会内の会見で9議席獲得したことに手応えを感じつつも、節目の2ケタに到達しなかったことを悔やんでいました。衆参どちらかで2ケタに到達しないと、政党としての存在感がいま一つのようです。これまでの3議席に比べれば3倍増ですから、いろいろ工夫して戦ってくれると思いますが‣‣‣。
・明治製菓ファルマが原口議員を提訴の報道
A ところで29日の地元紙に気になる記事(共同通信ネタ?)が出ていました。前回紹介した『プランデミック戦争』の著者、立憲民主党の原口一博議員(当選)を明治製菓ファルマが提訴する方針だというニュースです。
報道によると、「同社は原口氏を損害賠償などで近く東京地裁に提訴すると明らかにした」、「『国と取り組んできた公衆衛生向上への取り組みが攻撃された』として警告文を送ったが、改善が見られず提訴に踏み切る」ということでした。
B 実際にはまだ提訴していないようですね。原口議員は選挙期間中の「当て逃げ」報道だと言っていましたが、これについては、さっそくれいわの大石あき子議員がツイッターで、「レプリコンワクチン製薬会社が批判者を訴えるのは許されない」、「原口議員の考えがどうかは関係なく、これはワクチンを不安に思う全ての国民への脅し」と発言しました。
ここでも興味深いのは、マスメディアには明治製菓ファルマの提訴方針に関する記事はありますが、われわれが前回、紹介したようなコロナワクチン行政に関する全体的な構図を解説したような記事が皆無に近いことです。こういう一方的な記事が垂れ流されることは世論を一定方向に誘導する危険があります。
A あの記事を読んだ時は、自社のワクチン開発に強い危惧を投げかけた『私たちは売りたくない』の著者、チームKの人びとはいま社内でどういう状況に置かれているのかということでした。なぜ報道機関はそういう問題に切り込むドキュメントを書こうとしないのでしょうね。
B 前川喜平さんと田中優子さんが共同代表をつとめる「テレビ輝け!市民ネットワーク」という団体が、テレビ報道の公正中立を求めて、6月27日のテレビ朝日ホールディングスの株主総会で、「政権の見解を報道する場合にはできるだけ多くの角度から論点を明らかにする」などの内容を定款に追加する」といった放送法の趣旨にのっとった株主提案をしました。結果的に否認されましたが、この件で田中さんが「アークタイムズ(Arc Times)」というネットメディアで事情説明をした内容に関して、テレビ朝日放送番組審議会委員長の見城徹氏と同氏経営の出版社、幻冬舎がアークタイムズの尾形聡彦代表や田中優子氏らを名誉棄損で2000万円の損害賠償訴訟を起こしています。その第1回口頭弁論が9月26日に行われ、その後に尾形、田中両人などが記者会見をして、カンパなどの訴訟支援を訴えました(写真)。
尾形代表らは、これを「スラップ訴訟だ」として、徹底的に闘うと言っています。スラップ訴訟というのはSLAP(strategic lawsuit against public participation、市民参加を妨害するための戦略的訴訟)、言ってみれば、富裕な個人や大企業などが学者やジャーナリスト、市民組織に対して批判や反対運動を封じ込めるために起こす威圧的訴訟のことで、ウエブに「わかりやすく言うと、 嫌がらせ等の目的で法律上認められないことが明らかな訴訟を提起すること」という、たいへんわかりやすい説明がありました。
れいわから先の参院選に立候補して当選(後に辞退)した水道橋博士が自分に対して起こされた「スラップ訴訟に対決したい」と述べたとき、この言葉が脚光を浴びましたが、訴訟を起こされた側は裁判をするために膨大な時間や資金が必要になります。訴訟を起こすと言って大々的に報道させ、実際は訴訟しないという場合もあるようです。
A テレビ朝日という大手メディアの幹部が弱小メディア、アークタイムズの報道内容を訴えるというめずらしい訴訟で、ともに「報道機関」ですから、「言論の自由」、「報道の自由」が争点にならざるを得ない。たいへん興味深いですね。
B こういう世情を見ると、いまさらではあり、また大いに陳腐でもあるが、「古き良き時代」という言葉が浮かびますね。かつては「実るほど頭を垂れる稲穂かな」とか「ノブリスオブリージュ(高い社会的地位には義務が伴う)」など、学問や実業で大成した人や庶民の上に立つ政治家などは謙虚であるべきであり、富裕層や支配層は社会(世界)全体の平和や繁栄に責任をもつべきだ考えられていました。近代民主主義はそれらの理念を制度的に保障しようとしてきたと言えるけれど、「啓蒙」という言葉がダサいと思われるなど、いまはすっかり様変わりしました。
弱肉強食的な風潮は世界共通でもあり、アメリカでは一握りの富裕層は自分だけが安全な場所に住めればいいと、大海原の孤島や宇宙の片隅に独自のコミュニティ用シェルターをつくり、外から攻撃されないようにガードマンを雇ったりしているようですし、「国際経済フォーラム(ダボス会議)」など超支配者グループの周辺からは「世界人口は多くなりすぎたから削減すべきだ」という声も公然と語られています。一方でコロナmRNAワクチンの危険性に関して、そういう大きな枠組みを踏まえて警告したり反対したりする勢力も少なからず存在します。
『プランデミック戦争』ではないけれど、まさに世界は「戦争」状態にあるとも言えますが、日本の支配層はそういう大きな構図に気づいているんでしょうか。明治製菓ファルマの訴訟目的にある「国と取り組んできた公衆衛生向上への取り組みが攻撃された」という記事の文言は、実際にどうだったかはわかりませんが、その背景に「国の政策は正しい」、「我々は国策に沿っているのだから、それに反対するのは許せない」という考えがあり、それ自体が世界の潮流から遅れていると感じさせます。社員に見えていることが経営者には見えていない。
これもまた自公政治の大きな問題点ではないでしょうか。私たち自身、世界の潮流に無知であってはいけないわけですが、大きな視野をもった政治家がいよいよ重要になっている今だからこそ、れいわへの期待も高まるわけですね。