Online塾DOORS<ジャーナリズムを探して>
B あけましておめでとうございます。ということで、今日は鎌倉源氏山にある葛原岡神社裏の高台から見た富士山の絶景をお届けします。
スマホで撮ったものだけれど、なかなか美しいし、ずいぶん近くにも見えます。同神社の宮司さんの話だと、「鎌倉一の富士」ということですが、実はこの絶景がいま消える寸前にあります。葛原岡神社の裏山は長い間、雑木や竹笹に覆われて、そこから富士はほとんど見えなかったのですが、その先にある雑木林の新しい所有者が、遺跡発掘調査などで雑木を切り倒した途端に、あーら不思議とばかりにその威容を見せ始めました。ところが、新しい所有者はこの絶景を目当てにかなり広大な屋敷を立てる予定で、すでに基礎工事が進んでいます(左写真)。
皮肉なことに、この絶景は見つかった途端に消える運命にあるわけです。
これはまことに残念至極と、源氏山に住む古民家移築&研究家の滝下嘉弘さんたち「源氏山公園の歴史的遺産と景観を守る会」の人びとがいま頭を悩ませています。土地の所有者はベンチャー企業の若い社長さんらしく、まさに絶景を目当てに自分の邸宅を建築中なわけで、すでに基礎工事は終えています。鎌倉市の建築許可もすでに得ており、これを阻止することは理屈上は無理でしょう。
それにしても、「この絶景が見つかった途端に見られなくなるのはまことに残念」、「鎌倉市がこれを譲り受けて源氏山公園の延長として整備できないか」、「そうすれば絶好の観光スポットになるのでは」などと、頭を悩まさせている状況です。もちろん頭を悩ますだけでなく、「この地を源氏山公園(風致公園)に含め、史跡の追加指定をお願いする」署名運動も始め、すでに4000筆ほどの署名を集めました。
葛原岡神社の祭神は鎌倉期の公卿、日野俊基で、鶴岡八幡宮の影に隠れた感じですが、源氏山ハイキングコースの中継地でもあり、今では初詣客や外国人客の訪問も増えています。瀧下さんはこれは決して建設反対運動ではないけれど、この絶景が失われるのは残念だとの思いから、何とかこれを「みんなの景観」として残すことは出来ないかと、年末から年初にかけて連日のように神社境内で署名運動に取り組んでいます。
A 富士山の絶景を守る会の人たちの奮闘が実るといいと思う反面、生活の苦労もない連中が富士山がよく見えるかどうかで騒いでいるにすぎないとも思いますねえ。山本太郎が言うように、中小企業はバタバタ倒れている。子ども食堂で食事せざるを得ない子どもたちは、この伊勢市にもいる。富士山より、今日の食事が問題だとも思うわけです。
B うーん、痛いところを突かれました。事態はすでに進んでいるので、民家の建築をここで止めることは無理だと思いますが、場合によっては、建築デザインを工夫してもらって、高台からでも見られるようにするとか、この高台により高い展望台を作ってみんなが富士の絶景を楽しめるようにするとか、いろいろ工夫の余地はあるのではないかとも考えるわけです。最近は海外からも源氏山を散策する人が増えており、鎌倉市としてもいい観光スポットになるように思いますが‣‣‣。
・年頭のSNSをにぎわせている中居問題
閑話休題。
年頭の話題は、昨年暮れにまた『週刊文春』が火をつけたタレント、中居正広氏(写真、『女性自身』)のセックススキャンダルですね。昨年騒がれたジャニーズ、松本人志などの性加害事件とよく似た構造で、「中居氏がフジテレビの女性アナウンサーに性危害を加え、9000万円を支払い和解した」というものです。
まだもっぱらSNSなどインターネット上の話題で、一方の主役、フジテレビを初めとして、既存メディアはどちらかというと静観の構えです。テレビ各社は中居氏がMCをつとめる番組をどんどん取り止めていますが、フジテレビも含めて、番組を止めながらその説明はないという奇妙な事態でもあります。新聞ももっぱら「下半身問題」との捉え方で、メディアのあり方への言及は少ないですが、日本テレビが「ザ!世界仰天ニュース」のMC、中居氏出演部分を全面カットして放映した件については報道しています。
A 下半身問題はうんざりではあるが、フジテレビがただちに「この件には一切関係ない」とのコメントを出しながら、後の報道で被害女性が女性上司に相談した時の対応が問題になるなど、フジが知らぬ顔の半兵衛を決め込むのは無理ですね。
B 前回、情報端末としてのスマートフォンがすでにテレビを凌駕しつつあることを総務省データをもとに話しましたが、メディア接触時間に関する以下のデータ(やはり総務省)も興味深いです。
平日のメディア利用時間は、10年前までは当然、テレビが長かったわけですが、2020年に逆転、2023年ではテレビ135分、インターネット194分となっています。休日の大勢も変わりませんが、インターネット利用時間は200分を越えています。 年代別に見ると、これも当然ながら、若年層ではテレビ視聴が著しく減少、代わってインターネットが伸びています。テレビは高齢者中心の「オールドメディア」になりつつあるのがよくわかります。
インターネット(スマートフォン)で何をしているかについては、「メールを読む・書く」、「ブログやウエブサイトを見る・書く」、「動画投稿・共有サービスを見る」などが上位を占めています。おおざっぱに言えば、メールを書くか、ユーチューブ番組を見ているわけです。
・IT社会における<ジャーナリズムを探して>
こういう現実を見ると、いくらテレビや新聞が黙殺しても、情報はどんどん広がっていきます。前回も触れましたが、メディアに投下される広告費もすでにインターネットがテレビを凌駕しているわけで、いまや新聞に続いてテレビが「オールドメディア」として衰退しつつあると言えるでしょう。昨年の選挙における投票行動の変化が象徴的ですが、これからの情報発信はどういう方向に向かうのか、民主主義社会を下支えするとされてきたジャーナリズム機能はどう変化するのか、これは「サイバーリテラシー」の提唱者として当面の最大の関心事です。
A よっ!真打ち登場! 絶え間なく変貌する情報発信の世界に、サイバーリテラシーがその道しるべになる時が来ましたね。
B おっ!嬉しいエール! 気を良くしたところで、主宰するOnline塾DOORSで、新年から<ジャーナリズムを探して>というシリーズを開講する㏚をさせていただきます。マスメディアOBでいまはユーチューブで活発に情報発信している人、テレビから転身したユーチューバー、ジャーナリズムに強い関心を持っている実務家、研究者などにご登場願って、IT社会におけるジャーナリズムについて考えようという企画です。
既存マスメディアのジャーナリズム機能の衰退は著しく、今回、明らかになったようにテレビの実体は腐敗の極に達したようにさえ見えます。中居事件に関して関西在住のジャーナリスト、今井一さんが、ユーチューブ番組で「性被害問題に口をつぐみながら、一方で世界の平和や政治を語るテレビとは何か。テレビ局の意向のままに発言しているタレントとは何か」と憤慨していましたが、既存マスメディアのジャーナリズムは崩壊寸前です。
一方、インターネットのユーチューブ番組の中には、一月万冊、鮫島タイムス、デモクラシータイムス、アークタイムスなど硬質のジャーナリズムを追及する試みがありますし、中田敦彦のユーチューブ大学などユニークな番組もあります。
しかし、インターネット上の情報発信全般を見れば、アクセス数や広告費稼ぎを目的に真偽取り混ぜた情報が暗躍する魑魅魍魎の世界であり、それらの有害情報、フェイクニュースをチェックするとして発足した官民のファクトチェック機関が、有害情報駆除を口実に反権力、反体制的な情報を技術的な手法で「検閲」している問題もあります(トランプ政権発足にあわせて、フェイスブックを運営するメタ社が「ファクトチェックを廃止する」としたことで、新たな懸念も生じています)。またネット・ジャーナリズムの旗手の多くが既存マスメディア出身であることは、人材供給源としてのマスメディアの存在感を印象づけると同時に、マスメディア以後のジャーナリスト育成はどうすればいいのかという問題も投げかけているでしょう。かつて「ジャーナリズムの雄」を自負した新聞再生の可能性についても考えていくつもりです。
A 昨年暮れの29日、TBS「報道の日」2024と題する番組で、MCの一人として、「ユーチューブ大学」の中田敦彦氏が参加していたのを興味深く思いました。
恒例の企画で今年のテーマは「TBSテレビ報道70年 8つの禁断ニュース」で、MCに膳場貴子、井上貴博TBSアナウンサーに加えて中田敦彦氏が加わりました。「ジャニー氏性加害問題 補償の裏側は…」、「安倍3代と統一教会 “組織的関係”の原点」、「田中角栄と三木武夫 知られざる権力闘争」、「繰り返された核の悲劇 原発導入に日米の思惑」、「第一次トランプ政権 アメリカ議会襲撃事件の裏で起きていたこととは?」など、この間の8大事件を取り上げた、なかなか重厚な作品でした。
B 前回コラムで中田敦彦氏に言及していますが、彼のユーチューブでの情報発信が評価されての大手テレビへの〝抜擢〟とも言えますね。彼は既存メディアの映像の豊富さに驚きと敬意を表していましたが、巨大な情報収集力をはじめとする古いメディアの底力を過小評価するのは禁物でもあります。
Online塾DOORSは完全なボランティア運営で、出演者に支払う謝礼の用意もありません。他の講座同様、もっぱら善意にすがっての運営になりますが、心あるスピーカーのご理解、ご協力を得て、出来る処までやってみようと、またぞろ「老骨に鞭打って」います(^o^)。
あわせて<ジャーナリズムを探して>へのみなさんの積極的参加を呼びかけたいと思います。希望者は info□cyber-literacy..com(□→@)まで