新サイバー閑話(126)<折々メール閑話>67

強者と弱者の亀裂は日米とも変わらない

B 前回参院選でれいわ新選組・比例東京ブロックから立候補(惜しくも落選)した伊勢崎賢治さんが、れいわの政策委員(外交安全保障担当)として、2月9日のNHK日曜討論に出ていました。つい最近の日米首脳会談に対して「100点満点中で10点」と辛口の採点をしつつ、「日本だけは違うという希望的観測はやめましょう」という大局的な発言もありました。東京外国語大学教授であり、政府代表として国際紛争の現場で長く活躍してきた人を政策委員として擁するれいわの実力を大いにアピールしましたね。

A 1月下旬の日曜討論には、やはり政策委員の長谷川うい子さんが出て、「いまこそ消費減税」、「積極財政で経済を活性化」と、れいわの政策を理路整然と主張していました。

・堂々たるれいわの陣容に頼もしい新人

B 前回、大石あき子さんの「名演説」について紹介しましたが、れいわの新人、やはた愛さんの衆院予算委員会での質問も、関西弁で石破首相をやんわりと批判するなど、新人離れの堂々たる活躍でした。お飾り程度のタレント議員とは違いますね。

A 次期参院選の候補として京都選挙区の西郷みなこ(南海子)さん(37)が公表されましたが、京都大学大学院で教育学を学び、3児の母、長く市民運動に取り組んできた方です。記者会見での発言を見ても、たいへん頼もしく感じられました。
 れいわ新選組の顔ぶれは、他党を完全に圧倒していると思いますねえ。

B れいわの支持率が少しずつ上向きになっているのもむべなるかな、ですね。たとえば、左表はNHKの2月の世論調査結果です。NHKは政党支持率は高め、れいわ支持率は低めに出る傾向がありますが、ここで注目したいのは若年層のれいわ支持率です。 
 NHKではまったく注目していないけれど(^o^)、全体では2.1%と、野党では立民、国民、公明、維新、共産に次ぐ6位ながら、18~39歳で4.2%、40代4.8%と、国民民主党に次いで野党第2位です。50代の5.9%は3位。これは大いに期待できる数字じゃないでしょうか。
 ただ60代以上の高齢者の支持率が低い。これには我々としても力不足を感じます。80歳以上が自民48.5%、立民13.6%という数字には、旧態依然とした政治意識を感じさせられますねえ。

・トランプが当選したのには理由がある

 アメリカではトランプ大統領が再登場、その強硬姿勢を警戒する声も強いようですが、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授は、講演や各種インタビューで、「アメリカでは何十年もの間、勝者(金持ち)と敗者(貧乏人)の格差は広がり、上層階級には莫大な利益をもたらし、下層階級には賃金の停滞、仕事の海外流出などをもたらした。政治を悪化させ、人びとを分断させてきたわけだが、その頂点が(トランプが最初に当選した)2016年だった」、「底流に金持ちになりたかったら大学に行けという考えが流れており、貧しい人びとは自助努力がたりないという蔑みの感情があった。こういう貧困層の不満をトランプはうまくすくい上げた。民主党はいまだにその意味が分かっていない」と述べています。従来、民主党支持が高かった貧困層、黒人層からもトランプ支持する人が出ており、「もしトランプが不適格であり、我々が言うように、民主主義への深刻な脅威だとしたら、なぜ国民の半数、いや今や半数以上が我々の提案する民主主義よりも彼を選ぶのか」(GaribenTVから)と。
 サンデルは15年ほど前、NHK教育テレビでも放映された「ハーバード白熱教室<これからの『正義』の話をしよう>」で日本でも有名になった政治学者で、主著は『民主政の不満(Democracy’s Discontent)』です。
 富者と貧者がいっしょに行動する空間が必要で、たとえば野球スタジアムにしても、昔はみんながいっしょの席で楽しんでいたのに、今では富者と貧者は別々の場所で観戦するようになり、共通の経験が失われたとも言っています。それ以前に教会、組合活動、ボランティア組織などの伝統的な信頼の構造がどんどん消えていくことに警鐘が鳴らされ、「社会資本」(Social Capital)の重要性が叫ばれたのと軌を一にしています。

A 「大学へ行け、大学へ行け」と追い立てられた人びとの側から見ると、大学は「金持ちになるための技術を習得する」場となり、これは以前にも話題にした「まともな人間を育てない『教育』」(『山本太郎が日本を救う』所収、アマゾンで販売中)ということになりますね。

B そのとき、エマニュエル・トッドの『大分断』(PHP新書、2020)「教育がもたらす新たな階級社会」について紹介しました。教育が知性を育むことから離れて、ただの「資格」取得のためとなり、物事を考える暇もなく学歴を積み上げていくだけの「自分でものを考えない」、「愚かな」人びとが指導層を生み出していく。アメリカを見ても、そして日本の現状を見ても、大いに納得できる話です。だから、いまの若者たちは「寅さんがなぜおもしろいのか」を理解できないわけですね。

A 他人を蹴落としてもいい大学に行こうという風潮が人間性を高めるわけがなく、ただ金儲けに必要な知識だけを詰め込んだ、いびつな人材を育てることになっている。だから高等教育を受けるほど、人間的資格に欠ける人が出てくるんですね。

・対米追随外交の縮図、「哀しき国会」

B トランプ大統領はバイデン政権の政策を覆すような大統領令を矢継ぎ早に出し、パレスチナ人をガザから他に移すという強硬策も進めようとしています。ウクライナ問題では、ウクライナを支援しつつ戦争を続行させてきたバイデン政権とは真逆というか、むしろロシア寄りの停戦を進めようとしているようです。それがどういう結果になり、歴史的にどう評価されるかはわかりませんが、トランプ大統領が「停戦」の実を取る可能性もあります。実行力という点では、ちょっと目を瞠るものがあり、それだけ日本の石破首相の軟弱な姿勢が際立ちますね。
 ウクライナ問題で思い出すのは、2023年5月23日にゼレンスキー大統領が来日した時の国会光景です。午後5時半から議員たちが続々と会場内に入り、岸田文雄首相や閣僚、衆参両院議長をはじめ計約500人が着席しました。午後6時、ゼレンスキー大統領が会場前方のモニターに映し出されると拍手が湧き、細田博之衆院議長の開会あいさつ後、ゼレンスキー大統領の演説が始まりました。12分近い演説が終わると議員たちは一斉に立ち上がり、約40秒間にわたり、割れんばかりの拍手。スタンディング・オベーションですね。山東昭子参院議長は演説後、青と黄のスーツ姿で、議員を代表して答礼、「閣下が先頭に立ち、また、貴国の人々が命をも顧みず、祖国のために戦っている姿を拝見して、その勇気に感動しております。日本国民もこのようなロシアの暴挙は絶対に許せないと、ウクライナへのサポート、そして支援の輪が着実に広がっております」と挨拶しています。
 その熱狂の国会で、唯一、それに賛同せず、起立しなかったのがれいわ新選組です。後に山本太郎代表は「あのときの風あたりは強かった。まるで非国民のように言われたけれど、ロシアとウクライナの戦争をやめさせようと思ったら、そのどちらかに加担しちゃだめでしょう。平和憲法を持つ日本こそが停戦に向けて努力すべきなんですよ」と語っていたけれど、まことにまっとうな意見ですね。
 対米追随外交でバイデン政権に盲目的に従う岸田政権の哀しい姿がここにあるけれど、それに唯一抵抗したところに、れいわの真骨頂があったとも言えるでしょう。

A 赤旗日曜版に「男はつらいよ」の山田洋次監督の、「国全体の問題や世界に広く関心を持ち、自分は何をしなければいけないのかを考える。今それが、とても大事なんではないかと思います」という談話が載っていました。「ナチスが共産主義者や社会民主主義者を攻撃した時、声を上げなかったら、自分が攻撃された時は手遅れだった」というドイツの牧師の言葉を引用しながら。
 まさにいま頼れるのはれいわだけ! ですよ。夏の参院選は衆参同時選挙になるという観測もあるようですが、れいわが一気に大躍進することを期待したいですね。