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新 川 みなさんこんばんは。NPO法人「Wink」代表の新川てるえです。今日は配布資料を3部、会報誌と「Wink」のパンフレット、あと「Vポータル」のリーフレットを持ってきています。パワーポイントを用意していますので、それを見ながら話を進めたいと思います。私が提供できるキーワードがNPO法人とシングルマザーと離婚ということで、みなさんの興味をどのくらい引くかしらと思いながらここにいます(笑)。元気だけは人一倍あるので、なんだかわからなかったけれども、とりあえず元気はもらったわ、と終わればいいと思って、話をしていきます。
 まず「Wink」の団体概要をお話ししたいと思います。NPO法人についてよく知っている方はどのくらいいらっしゃいますか。少ないですね。特定非営利活動法人ということで、非営利の活動をしているのに「新川さんどうやってご飯を食べているの?」とよく聞かれますね(笑)。このへんの理解から簡単にお話します。
 NPOというのは、理念を持って活動しています。私たちの団体の大きな理念は、「子どもの健全育成と大人世代の責任の全うを社会に提案する」ということです。3つの柱、「1 社会教育にかかわる活動として大人世代の責任の全う」、「2 一人親家庭におけるさまざまな支援活動」、「3 子どもの健全育成にかかわる活動」を理念に活動している団体です。
 お金を稼がすにどうやって運営しているの、ということなんですが、まずお金を稼がないというのは間違った理解で、お金は稼ぎます。会費があったり、うちは営利事業もしているので、実際にかかわっている企業会員さんからお仕事をもらうこともあります。それから冊子で「Vポータル」というのをお渡ししていますが、これは声で聞くインターネットのことで、ここでカウンセリング・チャンネルなどを提供しているんですが、こういうのもお金が入ってくる収益事業です。
 通常の企業とどう違うのかというと、稼いだお金を役員や社員に還元するのではなく、私たちが目的としている3つの柱のために使っていくという考え方が正しいのかなと思います。だからといって、お給料というか報酬をゼロでやっているわけではなくて、それ相応の、動いただけの報酬は私もとるしスタッフもとる、というのがNPOのしくみです。特定非営利の非営利のところをたまに間違って理解する人がいるんですが、決して無償ボランティアをしているわけではありません。ただ、日本のNPOは寄付だけでは成り立たないので、運営していくのが非常に難しく、たしかに運営的には厳しいものがありますね。企業の理解をもらって、会員の理解をもらって、営利事業をして、やっと何とか運営していける状態です。
 現在の「Wink」の団体規模なんですが、拠点を2箇所おいています。東京都中野区と千葉県柏市です。主となる事務局は柏市です。会員数は全国で1000人、これは会費を払ってくれる会員という位置づけですね。その他に運営スタッフがボランティアで全国で10人います。
 私は柏市で生まれ育ちました。これは興味を引くところだと思いますが、10代でアイドルタレントとして芸能界にデビュー。いまから20年弱前のことなので、ここにいるみなさんの多くが生まれたころなのかな(笑)。タレント名を言ってもわからないと思うので、知りたい人がいれば、後でこっそり聞きに来てください(笑)。芸能界にいるときに、実はできちゃった結婚をしました。22歳のときです。結婚というのがすごくピンク色の夢物語だったので、よく知らずに籍を入れて気がついたら、責任感のなさの離婚をしていた、というのが第1回目の離婚ですね。第1回というのは、私は2回離婚しているんです。
 1度目の離婚をしたときに、私自身は芸能界とかモデル経験しかなかったので、本当に何もできなくて、OLにもなれない状況だった。それで子どもを預けて2年間、ゴルフ場でキャディをやりました。その当時はインターネットとのかかわりはゼロです。
 その後に転職しまして、パッケージング・コーディネーターといって、化粧品のパッケージの企画デザインをする会社に入社しました。そこで9年間のOL経験をしている間に再婚して、2度目の離婚もしています。それなりの覚悟をもって再婚して、5年間の結婚生活を営んでいたんですが、価値観の違い、簡単に言うと、相手と同じ夢を見ていくことができないなと感じてしまったときに、離婚を選んだほうが自分は幸せになれると思えたんですね。そこで離婚しました。
 インターネットと出会ったきっかけは、もうホントに遊びからです。まずチャットにはまりました。毎晩、毎晩、チャットが楽しくて、楽しくてしょうがなくて……。ブラインドタッチもできない状況から始めたんで、最初はチャットに入るのがすごく怖かったんですね。チャットに入ってくる人たちって、バーッと打ってきて、すごく速いじゃないですか。怖いなと思いながらも、これをやっていたらキーボードが速く打てるようになるかもしれないと、ハマッてやっていたら本当に速くなりました。ブラインドタッチが今はできるようになっています。
 そんなことから始めて、好奇心でありとあらゆることを試して遊び、出会い系サイト「あっちゃんラブラブお見合い」とかって知ってますか。今もあると思います、相手との相性が出るんですよね。100パーセントとか、80パーセントとか、男性との相性が出て、メールを出すと自分と相性のいい人と出会えてメール交換ができる、というサイトにも出会って、それはもう7年くらい前なんですけれども、いまもそこで出会った男性と友だちだったりします。私はわりと恋愛関係にはなりづらくて、お友だちになってしまうのが得意で、いろんなことで出会った友だちもたくさんいます。
 自分のサイトを立ち上げた経緯は、2度目の離婚をしたときに、離婚まではすごく馬力を出して「ああ、終わった」という感じですごく嬉しかったんですが、その2、3ヵ月後に離婚ブルーが訪れました。たぶんみなさんはまだ結婚もしていないので、離婚ブルーと言われても「何のこと?」という感じだと思うんですが、離婚して2、3ヶ月してすべてが落ち着いてしまったときに、本当にすべてをなくしてしまったという気持ちが襲ってきたんですね。普通に引越しをしても、調味料までなくすってないですよね。私は何も持たずに離婚をしたので、家に調味料がなかったんですね。料理をするときに醤油とか砂糖とか塩とかを買いに行かなきゃいけないときにすごく落ち込みました。「ああ、調味料までなくしちゃったんだ」とすごく辛くて、みんな同じような経験をしたときにどういうふうに立ち直っていくんだろうという答えをインターネットに求めました。
 それまではチャットで遊んだりとか、とくに同じ経験をしている仲間を求めるということはなかったんですが、そのときには同じ経験をしている仲間を強く求めて、97年秋のことですが、ヤフーという検索サイトで「母子家庭」というキーワードをたたきました。ゼロヒットでした。次に「シングルマザー」というキーワード、「離婚」というキーワードをたたきました。1、2件ヒットするサイトがあったんですが、どれも弁護士さんが発信しているような情報サイト、法律や福祉の情報サイトでしかなかったですね。当事者が悩んでいるときに、こうやって私は元気になったよという声を聞くことができなくて、探して探して、じゃあないのなら自分でつくってしまえ、ということで立ち上げたのが「母子家庭共和国」です。
 先ほど、ビジネスモデルがないところからの立ち上げというお話を小久保さんがされたんですが、私もまったくそうで、すべてが遊びから始まっていて、とてもラッキーなことに、あれよあれよといううちに、テレビとか雑誌とかの媒体にすごく取り上げてもらえるようになりました。気がついたら、編集者が私の日記をずっと読んでくれていて、いまは離婚とかシングルマザーがちょっとポジティブワードになっていると思うんですが、まだ非常にネガティブだったころですね、「離婚、シングルマザーを堂々とカミングアウトする女はすごい」ということで、本を書いてみないかという話になって、とんとん拍子に本が出ました。メディアに取り上げられるようにもなり、サイトのアクセス数があっという間に伸びました。

力を入れているのが「4月19日、養育費の日」

 いま現在、NPO法人「Wink」としての会員数は少ないんですが、「母子家庭共和国」のヒット数は1日に平均4万ヒットあります。それだけシングルマザーだけでなく、「家族」、「離婚」というキーワードを求めて集まってくる人たちがいるということです。私たちの事務局機能は非常に小さいものです。私がいて、常駐はもう一人、伊藤という女性がいるだけです。二人で事務局に常駐して、私は出かけることのほうが多いんですが、10人のボランティアスタッフを動かしてます。
 就労支援や住宅支援、そういった支援活動は、まわりにいる企業会員さんとサポート会員さんに支えられています。「Wink」と例えばA社が提携して、事業をつくり出していく、それが会員サービスになるというしくみをとっています。相談事業もそうですね。「Wink」とカウンセラーさん、弁護士さんが提携して会員さんにサービスを提供するというしくみです。私たちは事務局規模を大きくしていくのではなく、まわりの賛同してくれる人、応援してくれる人たちをどんどん大きくして、強力な支援策をつくっていこうと考えてやっています。いま現在、住宅支援があったりとか、就労支援、生活支援といった新しい支援がどんどん生まれています。
 神奈川日本建設工業さんとは一人親家庭の住宅支援をやっています。母子家庭って、すごく部屋が借りづらいんですね。「保証人を2人以上つけないと貸さないよ」と言われたり、大家さんの理解がないと「母子家庭には部屋は貸しませんよ」とか、引越しの敷金のトラブルとか。女性と子どもだけということで甘く見られて、思っていた以上に敷金を要求されたりとか、そういったトラブルに対応してサポートをつくっているのが、この神奈川日本建設工業さんです。
 クリーニング店舗を東京都内だけで300店くらい展開しているチェーン店、キクヤさんとシングルマザーの就労支援の部分で、オーナー制度というのをつくっています。これは国でもすごく注目していて、新しい就労支援事業ということで、マスコミにもいろいろ取り上げられています。そういう感じで、企業と提携して新しい支援事業を少しずつですがやっている最中です。97年12月にサイトを立ち上げ、去年7月までは任意団体として活動していました。NPOになってからいろんな事業を動かしている感じです。
 8つのコミュニティを運営していますが、一番大きいのが「母子家庭共和国」、父子家庭も応援しています。母子家庭の支援団体ととられることが多いんですが、決してそうではなく、家族全般の支援ということで、どちらかというと子どもの健全育成に力を入れています。来年からは子どものカウンセリングも行おうと思っています。アクセス数が一番多いのは、やはり「母子家庭共和国」です。
 事業内容としては、相談事業、出版物の企画発行、スキルアップセミナーの開催、一人親家庭の就労支援、一人親家庭の住宅支援、養育費に関する啓発活動と、書いてあるとおりです。相談事業はまさしくカウンセリングですね。「Vポータル」の中に「Winkの女性の悩みお助けチャンネル」というのがあって、ここで実際に「Wink」に寄せられる相談事例に私が回答しています。電話料金しか取られないので、よかったらかけて聞いてみてください。やさしいアドバイスが聞けると思います(笑)。
 いま一番力を入れている活動が「4月19日、養育費の日」です。勝手に「養育費の日」を決めて、10年計画を立てて活動しています。日本では、離婚した後に夫が養育費を払わない。2割しか払っていないんですね。8割の離れた親が、離婚したら縁切りのように子どもたちに会わない、養育費は支払わない、という現状はすごくおかしいですね。実態調査を行ったり、Tシャツを作ったりして、通常の女性団体がやらない方法で活動を広げていきたいと思っています。
 養育費に関する活動は国からもかなり認められていて、私自身も国会に参考人として呼んでいただきました。この秋は法務省の法制審議会にも呼ばれて発言しています。来春からは、強制執行をかけると将来分にわたって養育費の差し押さえができるように法改正も行われました。私たちは、子どものためを考えると、面接保証権もとても大事なものだと思っています。会わせないから払わない、払わないから会わせないという大人げないイタチごっこみたいな戦いはやめようと強く訴えています。これは意義のある活動だと思っています。
 養育費の活動および就労支援などでいろいろな媒体に注目していただいて、そのことでサイトのアクセス数も伸び、私自身もいろいろなところに引っ張り出していただいたりとか、そういうことで活動が広がっている感じで、いろんな意味で本当にラッキーと思っています。タイミングと自分のエネルギーでいいものを引き寄せているのかな、という感じです。
 NPOの第1期は2003年8月で終わりましたが、この間に大きい活動をたくさんできました。厚生労働省の母子家庭施策会議にオブザーバーとして参画もできました。当事者団体の意見を行政が聞くのは画期的で、そういう意味では、当事者としての意見をちゃんと聞いてもらえる団体に成長できたのかなと思っています。
 それから千葉県のドメスティック・バイオレンス支援基金で、無料の相談ラインを創設しました。家庭内暴力ですね。いま若い人たちにはデートDVというのもあるみたいで、恋人間の暴力というのも問題になっているようです。そういう問題にも取り組んでいます。助成金事業は3つ受けることができて、中でも東京都の女性団体の助成金で行った養育費実態調査という活動の意味は大きかったと思います。
 NPOにしてからの1年は、行政にも認められていろいろなところに入りやすくなり、NPO法人にしてよかったと思っています。


矢 野 新川さんとは関係ないけれど、こういうことを言ってる人がいるのを思い出した。「人は判断力の欠如によって結婚する。忍耐力の欠如によって離婚する。記憶力の欠如によって再婚する」と(笑)。これはまったく冗談です。最後に山田さんお願いします。


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