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<これからはサービスとサービスの交換の時代>

参加者  明治大学の夏井です。今日は苦しいお話もあって(笑)、僕自身も何回も失速しながら、どうにか1センチくらいのところで空中を浮いたり、沈んだりしながら生きているのでよくわかります。お話を伺っていて、3人それぞれやられていることは形式的には違うけれども、どこか似てるなと思いました。どこが似てるかというと、参加されるユーザーの方が、自分でイニシャチブを持っていると思えることをやっていることだと思うんですね。これが成功の原因だし、自分がハンドリングしているという感覚を持てる、女性の化粧品なんかはまさにそれだし、同窓会もそうだし、離婚とかいろいろな問題を抱えてる方は、自分のその瞬間で議論できるわけだし、だから、これからもユーザーは増えると思います。
 自分がハンドリングできるという感覚を持てなくなったら、このビジネスが終わるんじゃないでしょうか。例えば、特定のメーカーのマーケティングのシステムの中に組み込まれてしまうとか、あるいは政府の中のシステムに組み込まれてしまうとか、自分がハンドリングしているんじゃなくて、何かに飲み込まれているような雰囲気が出てきたら、このビジネスはなくなるだろうと思います。そこら辺をうまくバランスさせながらやっていったら、もっと面白いことができそうだな、というのが率直な感想です。
     それからもうひとつ、私自身いまは法律で飯を食ってますけれども、経済出身の人間で、インチキ経済学的な観点から見た未来予測なんですけれども、先ほどのお話にもあったように、個人対個人で何かができるようになってきたんですね。現在実現できているものは誰かが仲立ちして、ネットオークションで物体と物体の交換はできているわけです。問題ももちろんありますけれども、おそらく7割〜8割くらいはまともな取引がシー・トゥー・シーで成立して、オークション企業はその仲立ちをして、手数料なり広告代をいただいている。
 近未来は、サービスとサービスの交換になるだろうと私は思っています。これはユーザー自身が少しスキルアップしないとできないんですけれども、たぶんインチキ第三者評価機関ができて、正しいサービスをしている者を認証しましょうとか、そういうので儲けようというのが必ず出てくる。それはだいたい100パーセントインチキだから、そのマークをつけたものは信じないほうがいいわけで、要するに個人個人がネットオークションで物体なり何なりを見て、インチキかどうかを見分けるようなスキルが少しできたから、オークションが少しまともになったと思うんですね。
 それと同じように、一人ひとりがインチキなサービスかまともなサービスかを見極める、ある種のリテラシーみたいなものができると、たぶんサービスとサービスの交換を仲立ちする商売というか、ビジネスが成立可能なのではないか。というのが私の近未来予測なんですよ。もしかしたら、この意見、インチキかもしれません(笑)。口から出まかせかもしれないんですけれども、私の期待としては、男性というのはどうしても保守的で、組織的。わがままなように見えて、組織に寄りかかって生きたがる習性をどこかで持っている場合が多いので、むしろ女性のほうで、細かい、そういうのをやってみようか、どうしたらやっていけるかを考えていただけたら、もしかしたら成功するビジネスができるかもしれないなという感想を持ちました。


矢 野 清水さん、夏井さん、どうもありがとうございます。パネルの方々は、励まされたような気分になったと思うんで(笑)、一言ずつご意見を。


山 田 未来は後ろ向きにやって来るというのはとても実感して伺いました。最初の化粧品メーカーの反応は非常に冷たいものでしたし、いまこれだけお付き合いいただいているメーカーさんが増えてまいりましたけど、最初は「批判が寄せられるかもしれないサイトになんで広告を」なんて言われました。化粧品の志向性が強くて100人使って100人がいいというものはない、そのリアルな声だからこそ意味があるんだ、みたいなところがご理解いただけて、マーケティングのやり方として価値あるものだと認めていただけるまでに本当に時間がかかりました。
 中立性を保たないとダメだということも、その通りだと思います。コミュニティサイトですけれども、意図的にコミュニケーションをとりづらい仕様にしている点があるんですね。コミュニケーションが発生すると、そのコミュニティのサイト規模ってせいぜい、活発なコミュニケーションが発生すればするほど、数百とか数千という規模で止まって、自己崩壊に向かうと思っています。クチコミは実はコミュニケーションが発生していないモデルなんですね。だからこそ、これだけの数が集っても、それほどトラブルが起こらない。会員数も増やして、それに対して人がアクセスするという流れは、おそらくコミュニケーションを軸にしていたらできなかったと思います。ちょっと新しいタイプのコミュニティなんだと思っています。


小久保「ゆびとま」のサイトはちょっと特殊で、実名主義なんですね。インターネットがバーチャルで仮想の世界だ、ハンドル名だっていうふうな文化があって、その中で創生期から実名主義を貫いてきました。私はインターネット自体もあくまでも道具だと思っていて、いかに現実の社会で自分自身を充実させるか、そのためにどうインターネットが役に立つのかということを考えています。しかもコミュニティという最も難しい手段をとってしまいましたので、”正しい”出会い系というお話がありましたけれど、そちらに持っていくためにも、実名というのは絶対的に必要だと思っております。
 私がめざしているインターネットの出会いは、バーチャルはあくまでもバーチャルであって、実際にこうやってみなさん方と会うことによって、五感をすべて使って自分の表現をみなさん方に伝えられる場がとても大事だと思っています。それを通しながら感動のサイトとして「ゆびとま」が成立していくと。癒し系であり、パワーを与えられるサイトであり、人生の節目節目に立ち寄っていただけるようなサイトにしたいなと思っております。それが出会い系として非難されるのか、”正しい”出会い系といって賞賛されるのか、今後楽しみにしております。


新 川 私も「未来は後ろ向き」という言葉から勇気をもらいました。離婚というメチャメチャ後ろ向きなキーワードから始まっているので、まだまだいけるぞという実感を持ちました。ありがとうございます(笑)。それから、中立の立場に関してなんですけど、私はNPOと行政の協同というのは、はっきり言ってありえない、行政の下請けになってはいけないと強く思っています。実際に行政と話をしていると、決まりきったことしかやらなかったり、新しいことに手を出さなかったりといったことが非常に不服で、協同というのは絶対にあり得ないなと思っています。そういう意味では、中立というのは大事だと思っています。
 出会いに関して言うと、うちの「Wink」にも学生の方からたくさんメールをいただきます。ちょうど卒論の時期になると、アンケートがいきなり添付で送られてきたりとか(笑)、いきなり自己紹介もなく質問がきたりとか、そういったものの中で昨年、うちの活動に関わってくれた女子学生がいました。レポートを書くために、レポートを書きたいんですというアクセスではなく、いきなり会員登録してオフ会に来たんですね。「シングルマザーではないんだけれど、離婚も経験していないんだけれどもいいですか」ということで出会って、イベントでいろいろと活躍してくれて、ピンクのカエルの着ぐるみを着ていっしょに活動をしてくれたりとか、最後まで活動を一緒にしてくれて、その上で彼女が書いたレポートというのは本当にすばらしいものでした。そういう出会いもあります。なので、メールの出会いは、すごく淡白になりがちなんですが、そこから出会えるいろんなチャンスがあると思うので、一言一言を大事にしてほしいなと思います。


矢 野 そろそろ時間が来ました。まだご質問がございますか。


<とにかく挑戦か、ビジネスモデルか>

参加者 お話を聞いていますと、ビジネスモデルは比較的あとから形がついてきたという印象だったんですが、若い人がこれから起業をしようというときに、ビジネスモデルをどの程度意識してつくっておくのか。ビジネスモデルができないかぎり起業すべきでないのか、それとも突っ走ったあとで(笑)、ビジネスモデルをつくっていけばいいんだというのか、どちらなんでしょう。


山 田 私個人の考えとしては、一ユーザーとしてこういうものがほしいんだんだという思いからスタートしていますので、ビジネスモデルありき、というよりは思いありき、だったんですが、会社の成り立ちとしてはビジネスモデルありきです。
 先ほどビジネスプラン・コンテストで賞をいただいたと紹介させていただいたんですけれども、実は起業してサイトを立ち上げる前に、コミュニティをキーにしたマーケティング、クチコミをキーにしたマーケティングということで案を書きました。賞をいただいてからスタートして、その賞があったからこそベンチャーキャピタルさんからの出資をいただいたという経緯がございます。サイト規模を考えていくと、自己資本なら前者の選択も取れたかもしれませんが、私たちの場合は、自分たちに何もないところからでしたので、ビジネスモデルありきでしたね。


小久保 私の場合はどちらかというと、自分でやりたいことをやっている。あとからビジネスモデルが追いかけるというような感じで、これまで頑張ってきました。私の思いが一途であって、私は何もできなくて、手法も何もわからなくて、ただやりたい、やりたいと言い続けた駄々っ子で、それを私を御輿に上げてくれる人たちがたくさんいたというのが本音です。
 いままでの日本は、一度失敗すると立ち直れなかったんですね。それをつぶしてきたという社会があったと思うんですよ。でも、いまはこれだけスピードが速いと、いかに失敗したことがあるか、どれだけ失敗した経験を持っているか、というのがものすごく重要なことだと思っています。私の年になると、失敗して立ち上がるには体力もきついなと思いますが、若いときにどれだけ失敗できるかということだと思いますので、思ったらやってみるほうがいいんんじゃないでしょうか。
 アメリカの学生たちは、学食を食べながら事業計画を書いてるそうです。そういう意味で言うと、事業計画というかビジネスモデルありきなのかなと思いますが、それでも若ければ若いほど、思ったことは一歩ずつでもやってみるというのがすばらしいことなんじゃないかと思います。


新 川 私もビジネスモデルというのはあまりなくて……。ただ株式会社を起こしたときにe-ラーニング事業に取り組んだんですね。いまから3年以上前で、業界としては早い取り組みだったと思います。しっかりとしたビジネスモデルがありました。役員はすごくビジネスモデルの好きな人で、いつも会議ばかりで、ビジネスモデル、ビジネスモデルと言っていました(笑)。
 私は考えながら進む人なので、よくぶつかったんですね。でも、そのしっかりとしたビジネスモデルがあったものは成功しなくて、結局、自分が好きでやってきた趣味のほうが伸びてきてしまいました。私は思いついたら動かして、ということをやってきたので、どちらかというと、好きなことを伸ばしていくほうが大きいんじゃないかと思っています。石の上にも3年と言いますが、3年間耐えることはすごく大事だと思っています。「母子家庭共和国」はもう6年目になりますが、3年耐えて、やっと形が作れたかなと感じています。


参加者 新川さんへの質問になると思うんですけど、いままでの価値観をひっくり返すというか、母子家庭は差別されて当たり前みたいなところをひっくり返すことで、風当たりというか、抵抗勢力というか、そういった手ごわい相手はいましたか。


新 川 そうですね。だから、私がカウンセリングを学んだというのもあるんですが、やっぱり世の中にはやさしい人ばかりじゃなくて、嫌なことを言う人というのはたくさんいて、未熟だったころはそれに対していちいち反論をしたり、戦うという姿勢だったんだけれども、精神的に自分が強くならないと乗り越えられないし、私が元気になることが元気のない人のお手本になるんだなと思ったんですね。だからといって、あんまり楽しすぎると、なんか母子家庭楽しそうじゃない、とかね(笑)、児童扶養手当もらってラクしてるんじゃないのとか言われてしまうので、そのへんの見せ方はすごく大事で、自分の精神面のコントロールはいまでもすごく難しいです。カウンセリングを学んだのがすごく役立っていますね。



矢 野 これでお開きにしたいと思います。パネルをおつとめいただいたお三人の方、どうもありがとうございました。このシンポジウムは明治大学法学部の主催ですが、明治大学短期大学、情報科学センター、あるいはSHIPプロジェクトなどにも協賛していただいてます。ご協力いただいた方々にも感謝したいと思います。それから、今日お集まりいただいたみなさん、貴重なご意見をいただいた方も含めてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
<文責・矢野>


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